ロイヤルティ契約書式
2022年8月5日セミナー「デザインロイヤルティ契約のきほん」で発表された、JIDAプロフェッション(旧職能)委員会と日本弁士理会との共同契約研究会の「ロイヤルティ契約書」参考雛形関連資料となります。
青木弁理士の契約書使用上の説明スライド
セミナー時に使用した、青木弁理士の「デザインロイヤルティ契約のきほん」
契約書使用上の説明スライド
JIDAPRO20220805_A.pdf PDFファイル [1.6 MB]
ロイヤルティ契約書式
セミナーのレジュメとして配布した資料となります。
下記ロイヤルティ契約書式1、2と同内容となります。
220805ロイヤルティー契約セミナー契約書式.pdf PDFファイル [401.1 KB]
実資料の参考資料(外部リンク):特許権等の実施料相当額算定手法について 日本知的財産仲裁センター実施料判定プロジェクトチーム
※上記算定手法は当委員会作成のものではありません。配布自由につきリンクを掲載しています参考情報としてご覧ください。
ロイヤルティ契約書式1 創作者(デザイナー)意匠権所有型
意匠実施許諾契約書
○○(以下「甲」という。)と○○(以下「乙」という。)は、甲が保有する意匠権/意匠登録を受ける権利について、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(定義)
本契約において使用する次の用語の意味は、以下のとおりとする。
(1)「本件意匠」とは、本件成果物に基づく意匠であって、甲が保有する以下の意匠をいう。
意匠登録番号/出願番号:
意匠登録第号/意願○○○○-○○○○○
意匠に係る物品:○○○○○
(2)「本件製品」とは、本件意匠を用いて製造された製品をいう。
(3)「実施」とは、本件製品を製造し、使用し、譲渡し、貸渡し、輸出し、若しくは輸入し、
又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。)をする行為をいう。
第2条(実施許諾)
1甲は、乙に対し、本件意匠を独占的に実施する権利を許諾する。
2甲は、乙が本契約を交わした後3年間実施しないときは、第三者に実施許諾することができ、乙はこれに同意するものとする。
第3条(対価)
乙は、前条に定める実施許諾の対価として、別途定める本件製品の工場出荷額の○○パーセントに相当する金員(以下「実施料」という。)を甲に支払う。
但し、本項の金員が本契約締結日より〇〇年以内に金○○万円を越えなかった場合には、最低実施料として、金○○万円を別途支払う。
・実施料方式では、「工場出荷額」が対価算出の一基準となるため、契約締結前にその額を把握しておく必要がある。
そうすることで、契約締結後、「工場出荷額が想定より低かった」といったトラブル防止にもつながる。
・実施料率(%)は、販売数量と工場出荷額と販売年数に基づいて試算し、
どの期間でどの対価額に到達すればよいかを十分に検討して決定するのが望ましい。
・工場出荷額が低い場合は実施料率(%)で調整する場合もある。
・最低実施料が小さい場合や、最低実施料を受け取らない場合は、実施料率を段階的に変更する方法もある。
(例)最初の3年間:7%、4~5年目:5%、それ以降:3%
・本契約書のように、対価を実施料で受け取る場合は、製品が売れなかった場合に妥当な対価を得られないリスクがある。
そのため、例えば「工場出荷額が低く販売数量も多くを見込めない製品」等の場合、実施料方式ではなく、一括払いで受け取る方法を検討するのも一案。
・実施料について、売上高とは関係なく、年に○○○円、月に○○○円と定める定額方式もある。
第4条(対価の支払方法)
1乙は、甲に対し、毎年4月を始期とした四半期ごとの実施料に消費税相当額を加算した金員を、
各終期の翌月末までに、甲の指定する銀行口座への振込みによって支払うものとする。
振込手数料は乙の負担とする。
2乙は、甲に対し、前項の各終期から15日以内に、前四半期の本件製品の工場出荷額およびその出荷数量を通知する。
第5条(遵守事項及び免責)
1甲は、本件意匠につき、拒絶理由又は無効理由が存在しないことを保証しない。
ただし、本件意匠について拒絶理由通知書又は無効審判請求書を受領した場合は、
甲は、乙に速やかにその旨報告し、意匠登録の取得又は維持に向けて可能な限り努めるものとする。
2甲は、甲の合理的に知り得る限り、本件製品の実施が第三者の権利を侵害するものでないことを保証する。
万が一、乙による本件製品の実施が第三者の権利を侵害するものである場合は、
甲は、乙と誠実に協議を行い、可能な限り、解決が図れるよう努めるものとする。
3乙による本件製品の実施が第三者の権利を侵害するに至った場合でも、
甲は、前2項の規定を遵守する限り、その侵害について一切の責任を負わないものとする。
第2項:第三者の権利侵害に関するデザイナーの権利保証について
契約書の中には、デザイナーに対し「第三者の知的財産権を侵害しないことを保証する」といった保証条項が課されているものがある。
このような保証条項は、「デザイナーが権利侵害の成否について法律的知識に基づいて判断をし、かつ、権利侵害に基づく損害をデザイナーが負担すること」を意味するため、
デザイナーが一律にこれを保証することは避けた方が良いと考えらえる。なお、弁理士も鑑定などで侵害の有無についての意見を示すことはあるが「保証」はしない。
以下に、デザイナーが保証を避けるのが望ましいものと、一応保証できるものを列挙する。
①保証を避けた方が望ましいもの
・産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)
→侵害の成否について、法的な評価が必要となるため、デザイナーが判断することは困難と思われる。
・不正競争防止法2条1項1号、2号「他人の有名な商標や商品の商品等表示(商品の形態や模様など)と混同のおそれのあるものを使ってはいけない」
→他人の商品の形態などが有名であるか、混同する恐れがあるかなどの評価が必要なので、デザイナーが判断することは困難と思われる。
②一応保証してよいと考えられるもの
・著作権
・不正競争防止法2条1項3号「他人の販売後3年以内の商品の形態を模倣してはならない」
著作権や不正競争防止法2条1項3号は、他人の著作物や製品を見て、それを模倣することが侵害の要件である
(偶然同じようなものができても侵害とならない)。
模倣したかどうかはデザイナー自身が一番知っていることであり、他人の著作物や製品を模倣していない、
ということであれば著作権侵害や不正競争防止法2条1項3号違反はないので、これは保証してよいといえる。
ただし、無意識のうちに他人の著作物に近いものを創作してしまうこともあり得るし、他人の著作物からどのくらい離れれば侵害にならないか、
という判断も困難である。
したがって、著作権や不正競争防止法2条1項3号についても、保証する場合は「私の合理的に知り得る限り」というような留保をつけることが望ましい。
どうしても保証が必要な場合、損害額の上限を設定する、保険に加入する、といった方法も検討する。
なお、「模倣していない」ことの立証のために、デザイン過程を示す資料(デザイン開発ノート等)を作成し、日付を記載して保管しておくことが望ましい。
第6条(不争義務)
乙は、甲に対し、甲の本件意匠権の登録の有効性を、直接的にも間接的にも争わないものとする。
第7条(権利侵害の報告)
1乙は、本件意匠に係る意匠権が第三者に侵害され、又は侵害されるおそれのある行為を発見したときは、直ちに甲に報告するものとする。
2前項の場合、甲及び乙はともに協力して、速やかにその排除の手段を講ずるものとする。
3全項の侵害排除に必要な費用は、甲乙協議してその負担を定める。
第8条(製造物責任)
1乙は、本件製品について製造物責任を問われた場合、自らの判断と費用負担において対処するものとする。
2本件製品について甲が製造物責任を問われた場合、甲は、当該製造物責任に対して一切責任を負わないことを前提として、乙と協力して対処するものとする。
なお、乙は、当該対処に甲が要した費用及び当該対処によって甲が第三者に支払った金員を補償するものとする。
第2項:製造物責任の責任負担について
念のために契約で「製造物責任を負わない」ことを確認する規定となっているが、原則として、デザイナーが負うべき「製造物責任」はないと考えられる。
第9条(改良意匠)
1乙は、本件意匠を改良し、又は本件意匠に基づく新規の創作をした場合は、速やかに甲に通知するものとする。
2前項の創作の権利の帰属及びその取扱いについては、甲乙協議のうえ、これを定めるものとする。
第10条(解除)
甲及び乙は、他の当事者が正当な理由なく本契約に定めるそれぞれの義務を履行しないとき、または本契約に違反したとき、あるいはその他著しく不信義な行為があったときは、
書面により、30日間の期間を設けて催告し、当該期間経過後もなお当該事態が是正されないときは、書面で通知し、本契約を解除することができる。
この場合、併せてその被った損害の賠償を相手方に請求できるものとする。
第11条(契約有効期間)
本契約の有効期間は、本件製品の販売が終了するまでとする。
「意匠権の存続期間が満了するまで」等と規定する場合もある。
第12条(協議事項)
甲及び乙は、本契約に記載のない事項が生じた場合は互いに協議して決定するよう努めるものとする。
本契約締結の証として本書2通を作成し、甲及び乙記名押印の上、各自1通を保有するものとする。
年月日
甲:○○デザイン事務所
東京都○○
代表者○○○○印
乙:○○株式会社
東京都○○
代表取締役○○○○印
ロイヤルティ契約書式2 成果物の譲渡・イニシャルペイ型デザイン業務委託契約書
○○(以下「甲」という。)と○○(以下「乙」という。)は、デザイン業務の委託に関して、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(契約の目的)
1甲は、乙に対し、○○のデザイン制作業務を委託し、乙はこれを受託する。
(1)委託する業務:○○デザイン制作
(2)成果物(以下「本件成果物」という。):○○○○
2委託する業務の詳細は、別紙仕様書に記載のとおりとする。
第2項:委託する業務の詳細について
「委託する業務の詳細」は、可能な限り具体的に記載する必要がある。
・ゼロベースでの開発なのか既存製品の改良なのか。
・形状のデザインのみなのか、仕組みの工夫も要求されるのか。
・パッケージであれば店頭用か、容器か、箱かなど。
・成果物においては、提案するデザイン案の数、データ形式など。
・仕様書を受け取る際にも、その内容をしっかりと確認することが必要(仕様書の記載事項が第6条の「検収」の基準になるため)
第2条(定義)
本契約において使用する次の用語の意味は、以下のとおりとする。
(1)「本件製品」とは、本件成果物を用いて製造された製品をいう。
(2)「実施」とは、本件製品を製造し、使用し、譲渡し、貸渡し、輸出し、若しくは輸入し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出
(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。)をする行為をいう。
第3条(対価)
甲は、第1条に定めるデザイン制作業務及び第8条に定める権利譲渡の対価として、次の各号の金員を乙に支払う。
(1)作業時間に応じたデザイン制作実費として金○○万円
(2)実施料として、別途定める本件製品の工場出荷額の○○パーセントに相当
する金員。ただし、本号の金員が本契約締結日より〇〇年以内に金○○万円を
越えなかった場合には、最低実施料として、金○○万円を別途支払う。
第2号:実施料について
・実施料方式では、「工場出荷額」が対価算出の一基準となるため、契約締結前にその額を把握しておく必要がある。
そうすることで、契約締結後、「工場出荷額が想定より低かった」といったトラブル防止にもつながる。
・実施料率(%)は、販売数量と工場出荷額と販売年数に基づいて試算し、どの期間でどの対価額に到達すればよいかを十分に検討して決定するのが望ましい。
・工場出荷額が低い場合は実施料率(%)で調整する場合もある。
・最低実施料が小さい場合や、最低実施料を受け取らない場合は、実施料率を段階的に変更する方法もある。
(例)最初の3年間:7%、4~5年目:5%、それ以降:3%
・本契約書のように、対価を実施料で受け取る場合は、製品が売れなかった場合に妥当な対価を得られないリスクがある。
そのため、例えば「工場出荷額が低く販売数量も多くを見込めない製品」等の場合、実施料方式ではなく、一括払いで受け取る方法を検討するのも一案。
・実施料について、売上高とは関係なく、年に○○○円、月に○○○円と定める定額方式もある。
・デザイン制作業務と知的財産に関する権利譲渡の対価を分けて規定する場合もある。
第4条(対価の支払方法)
1甲は、乙に対して、前条に規定する金員に消費税相当額を加算した金員を以下の要領で乙の指定する銀行口座への振込によって支払うものとする。振込手数料は甲の負担とする。
(1)前条第1号の金員は、本契約締結後30日以内に支払う。
(2)前条第2号の金員は、毎年4月を始期とした四半期ごとの実施料を、各終期の翌月末までに支払う。
2甲は、乙に対し、前項の各終期から15日以内に、前四半期の本件製品の工場出荷額および出荷数量を通知する。
第5条(納入)
1乙は、本件成果物を、○○年○○月○○日までに甲に納入する。
2本契約の締結後、甲からの指示により委託内容に変更があり、その変更により納期を遵守できないおそれが生じた場合は、
前項の納入期日は無効とし、甲乙で協議し、改めて納入期日を定める。
3乙は、第1項で定める納期に本件成果物を納入することが困難となった場合は、ただちにその旨を甲に通知し、甲の指示に従う。
第6条(検収)
1甲は、本件成果物の納入後は、遅滞なく検収を行い、合格したときは、乙に対して速やかにその旨及び検収完了日を書面又は電子メールにより通知する。
2本件成果物の納入後14日以内に、甲から乙への連絡が無い場合は、前項の検収に合格したものとみなす。
第7条(検収完了後の修正作業と業務の中止)
1前条第1項の通知を受領した後に、本件成果物に関する修正作業が生じたときは、甲は、乙に対し、別途対価を支払うものとする。
ただし、乙の責めに帰すべき理由により生じたものは、この限りでない。
2前項の修正作業が生じた時は、甲は、乙による修正後の成果物の納入後、遅滞なくこれを検収し、
合格したときは、乙に対して速やかにその旨及び検収完了日を書面又は電子メールにより通知する。
3前項の通知があった場合は、当該修正作業後の成果物を本件成果物とする。
4乙は、業務の中止を希望する場合、速やかに甲に通知し、中止までの対価の支払い及びその成果物に関する知的財産権等の取り扱いにつき、甲と協議する。
第1項:検収完了後の修正作業について
・無償で修正に応じる場合は、修正の回数を決めておくのも一案。
・修正が有償であることや、無償修正回数の取り決めについては、見積書に記載する方法もある。
第4項:業務中止の場合の対価について
・業務中止となった場合に、「ここまで作業した」ことをどう説明するかが重要。
・業務に要した時間を記録しておく、途中で発生する資料に日時を記録する、要した材料等について伝票を保存しておくこと等の方法が有効。
・ステップごとの確認や「デザイン開発ノート」も有効。
第8条(権利の帰属)
1本件成果物に係る意匠登録を受ける権利は、第6条第1項に定める通知をもって、乙から甲に移転するものとする。
2前項の規定にかかわらず、前条第1項に定める修正作業が生じた時は、本件成果物に係る意匠登録を受ける権利は、
同条第2項に定める通知をもって、乙から甲に移転するものとする。
3甲は、本件成果物を、第1条に定めるデザイン制作業務以外の目的で使用する場合や、
仕様を変更して使用する場合は、乙の承諾を必要とし、別途対価を支払うものとする。
4本件成果物の制作過程で発生した本件成果物を構成しない文章、図画、写真等や、
不採用デザイン案の知的財産権は、乙に帰属し、甲には権利が無いものとする。
5甲は、前項の文章、図画、写真等や不採用デザイン案を使用する場合は、乙の承諾を必要とし、別途対価を支払うものとする。
第3項:発注者による本件成果物の仕様変更や目的外の使用について
・発注者がデザイナーの承諾なしに仕様変更可能とする場合は、その範囲(例えば量産適合のための微修正のみ可能など)や、デザイン変更後の対象物について、
デザイナーのチェックが必要である旨を予め合意しておく方が良い。
・どこまでが「第1条に定めるデザイン制作業務」に含まれるかについて、発注者とデザイナーとで見解が異なる場合もあるので、
第1条「契約の目的」において明確に記載することが望ましい。
第4項、第5項:不採用デザイン案について
・契約に明記しにくい場合は、「見積書」において契約の対価は採用案のみに対するものであることを記載する方法もある。
・採用時の条件を明確化した上で、不採用案は発注者のもの、と定める場合もある。
その場合、発注者が「不採用案」を採用(商品化)するときの条件(採用する旨の連絡義務、追加の対価の取り決め等)を予め契約で定めるのが望ましい。
・一定の期間を定めて、期限までに採用しない場合にはデザイナーのものになる(返却される)ことを契約で定める場合もある。
第9条(遵守事項及び免責)
1乙は、本件成果物の制作にあたり、他人のデザイン等を盗用していないことを約束する。
2乙は、本件成果物の納品前に、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)等を用いて本件成果物に関する先行登録意匠の有無を確認し、その結果を甲に報告することを約束する。
3乙は、乙の合理的に知り得る限り、本件製品の実施が第三者の権利を侵害するものでないことを保証する。
万が一、甲による本件製品の実施が第三者の権利を侵害するものである場合は、乙は、甲と誠実に協議を行い、可能な限り、解決が図れるよう努めるものとする。
4甲による本件製品の実施が第三者の権利を侵害するに至った場合でも、乙は、前3項の規定を遵守する限り、その侵害について一切の責任を負わないものとする。
5乙は、本件成果物の意匠登録の成否を保証するものではない。
ただし、甲による意匠登録出願後、拒絶理由通知書などが発行された場合には、乙は、意匠登録に向けて可能な限り甲に協力するものとする。
第3項:第三者の権利侵害に関するデザイナーの権利保証について契約書の中には、デザイナーに対し
「第三者の知的財産権を侵害しないことを保証する」といった保証条項が課されているものがある。
このような保証条項は、「デザイナーが権利侵害の成否について法律的知識に基づいて判断をし、かつ、権利侵害に基づく損害をデザイナーが負担すること」を意味するため、
デザイナーが一律にこれを保証することは避けた方が良いと考えらえる。
なお、弁理士も鑑定などで侵害の有無についての意見を示すことはあるが「保証」はしない。
以下に、デザイナーが保証を避けるのが望ましいものと、一応保証できるものを列挙する。
①保証を避けた方が望ましいもの
・産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)
→侵害の成否について、法的な評価が必要となるため、デザイナーが判断することは困難と思われる。
・不正競争防止法2条1項1号、2号「他人の有名な商標や商品の商品等表示(商品の形態や模様など)と混同のおそれのあるものを使ってはいけない」
→他人の商品の形態などが有名であるか、混同する恐れがあるかなどの評価が必要なので、デザイナーが判断することは困難と思われる。
②一応保証してよいと考えられるもの
・著作権
・不正競争防止法2条1項3号「他人の販売後3年以内の商品の形態を模倣してはならない」
著作権や不正競争防止法2条1項3号は、他人の著作物や製品を見て、それを模倣することが侵害の要件である(偶然同じようなものができても侵害とならない)。
模倣したかどうかはデザイナー自身が一番知っていることであり、他人の著作物や製品を模倣していない、
ということであれば著作権侵害や不正競争防止法2条1項3号違反はないので、これは保証してよいといえる。
ただし、無意識のうちに他人の著作物に近いものを創作してしまうこともあり得るし、
他人の著作物からどのくらい離れれば侵害にならないか、という判断も困難である。
したがって、著作権や不正競争防止法2条1項3号についても、保証する場合は「私の合理的に知り得る限り」というような留保をつけることが望ましい。
どうしても保証が必要な場合、損害額の上限を設定する、保険に加入する、といった方法も検討する。
なお、「模倣していない」ことの立証のために、デザイン過程を示す資料(デザイン開発ノート等)を作成し、日付を記載して保管しておくことが望ましい。
第10条(秘密保持義務)
1甲及び乙は、本件業務遂行に際し相手方から得た一切の秘密情報につき、秘密を保持し、これを第三者に開示、または漏洩してはならない。
ただし、次の各号のいずれかに該当する情報についてはこの限りではない。
相手側から取得する前に、既に公知であったもの相手側から取得した後に、自らの責によらず公知となったもの相手側から取得する前に、
既に自らが所有していたことを立証できるもの正当な権限を有する第三者から合法的手段により取得したもの2秘密情報の提供を受けた当事者は、
当該秘密情報を秘密として管理するものとする。
3本条の規定は、本契約終了後3年間存続する。
・デザイナーは、自己のみでなく、従業員や外注先に対しても自己と同様に秘密保持義務を遵守させる義務があることに留意が必要。
・発注者に対しても、デザイナーから提供する情報に秘密保持義務を課すべき。
デザイナーから発注者に対して提供する情報(コンセプト、モデル、不採用デザイン案、ノウハウ、営業秘密等)について、その提出物に「○秘」、
作成者の署名、作成年月日を記載、電子データにパスワードを設定するなどの方法が有効。
第11条(経費)
デザイン制作業務のために発生する交通費、外注費、モデル(サンプル)作成費等については別途協議の上決定する。
報酬とは別に必要経費として交通費、外注費、モデル(サンプル)作成費等を請求する場合は、規定しておくことが望ましい。
第12条(製造物責任)
1甲は、本件製品について製造物責任を問われた場合、自らの判断と費用負担において対処するものとする。
2本件製品について乙が製造物責任を問われた場合、乙は、当該製造物責任に対して一切責任を負わないことを前提として、甲と協力して対処するものとする。
なお、甲は、当該対処に乙が要した費用及び当該対処によって乙が第三者に支払った金員を補償するものとする。
第2項:製造物責任の責任負担について
念のためにデザイナーが「製造物責任を負わない」ことを確認する規定となっているが、デザイン業務の委託に際し、デザイナーが負うべき「製造物責任」は通常ないと考えられる。
第13条(改良意匠)
1甲は、本件製品を改良し、又は本件製品に基づく新規の創作をした場合は、速やかに乙に通知するものとする。
2前項の創作の権利の帰属及びその取扱いについては、甲乙協議のうえ、これを定めるものとする。
第14条(解除)
甲及び乙は、他の当事者が正当な理由なく本契約に定めるそれぞれの義務を履行しないとき、または本契約に違反したとき、
あるいはその他著しく不信義な行為があったときは、書面により、30日間の期間を設けて催告し、
当該期間経過後もなお当該事態が是正されないときは、書面で通知し、本契約を解除することができる。
この場合、併せてその被った損害の賠償を相手方に請求できるものとする。
第15条(契約有効期間)
本契約の有効期間は、本件製品の販売が終了するまでとする。
「意匠権の存続期間が満了するまで」等と規定する場合もある。
第16条(協議事項)
甲及び乙は、本契約に記載のない事項が生じた場合は互いに協議して決定するよう努めるものとする。
本契約締結の証として本書2通を作成し、甲及び乙記名押印の上、各自1通を保有するものとする。
年月日
甲:○○株式会社
東京都○○
代表取締役○○○○印
乙:○○デザイン事務所
東京都○○
代表者○○○○印